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白根大凧随筆

白根大凧随筆

日々雑感

新潟白根総合病院 医療安全管理部長 飯合恒夫

最近、死についてよく考えるようになった。55歳になり、父親が亡くなった歳まであと17年、人生の半ばを大きく過ぎたからだろうか。人を元気にするという志から医師を目指したのであるが、その時は全く死というものに関心はなかった。しかし、実際医師になってみると、死というものはいつも間近にあり、癌で亡くなる方、合併症で亡くなる方、予期せぬ疾患で亡くなる方、外傷で亡くなる方など、たくさんの患者さんの死に立ち会ってきた。そのたびに自分の無力感にさいなまれ、死を何とかしようという活力の源にもなった。だが、歳を重ねるにつれ、人は必ず死を迎える運命にあり、それは決して避けることはできない、受け入れなければいけないと思うようになってきた。祖父母の死、親の死などを経験し、その悲しみから離脱するための方策だったのかもしれない。死は万人に平等にやってくるもの、死後の世界は皆同じ、そこで亡くなった人に再会できると考えることで自分を慰めていたのだろう。 この頃、宇宙に関する本を読むことがある。宇宙は誕生してから138億年、そして、その時空は無限に続くそうだ。そう考えると、宇宙の中では、我々の存在や人生などはチリの大きさにも満たないちっぽけなものだ。でも、せっかく与えられた命である。死を迎えるまでどれくらいかわからないが、精いっぱい、悔いのないように生きよう。

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