文字

病院長挨拶

病院長あいさつ

‐新棟落成のご報告‐


一昨年10月に着工しました新棟は,若干の遅れはありましたがほぼ予定通りに完成し,2016年2月1日に新潟白根総合病院の東棟として開院いたしました.白根健生病院として地域医療を担い50余年,歴史に新しいページが追加されたのです.振り返りますと,この半世紀はバブル経済の破綻,少子高齢化,医療経済の悪化など,地域医療に携わる中小病院にも大きな影を投げかけてきました.特に直近の10年,さらに向かうところの10年は病院経営に極めて厳しい時代と言えます.しかしながら,こうした中で新棟を開くことができたのは,受診者・受療者の足が絶えることがなかったこと,そして建築への機運が高まったことにあると思います.


昭和63年,広野茂 前理事長の監修のもと"30年のあゆみ"という記念誌が製作されました.その記念誌には,昭和62年度の事業計画として"地域包括医療の確立"という言葉が記載されております.すでに現在の地域包括ケアシステムという概念を30年も前に先取りしたものだったと思うのです.さらに地域病院の将来像についても言及されております.それは,"住民の医療への要求は次第に高度化する.それに応えるためには地域医療を担う病院といえども,いくつかの点では他の病院に真似できないものを確立する必要がある"ということを鋭く指摘していたのです.私も着任して3年間,全く同じことを思い続けてきました.私事になりますが,卒後30数年,肝胆道膵の高度進行癌に対して積極的に手術をしてきました.切除することが極めて難しそうな症例を前にして,切除できない理由を探すよりも,どうやったら切除できるかにいつも腐心してきました.厳しい病態から劇的な回復を示す患者は小数例ながら実在する,このことを実臨床では忘れてはならないのです.


さて,中小病院にとって昨今の医療情勢は極めて厳しく,経営にはさまざまなリスクが伴います.しかしながら,リスクを恐れるばかりではなく,目標に近づく方策を考えることが必要です.厳しい時代だからこそ挑戦が必要なのだと思います.地域性あるいは病院の特質から,定型的症例が列をなすわけではありません.常にアノマリー,つまり定型的ではない症例が多くを占めます.一方,病理・病態だけが治療の適応を決める訳ではありません.治療に対する患者の思いは千差万別です.医師の根本的な考え方も多様であり,治療の選択に強い影響を与えます.今地域医療に求められていることは,一人ひとりの患者の気持ちをくみ取り,そのニーズに合わせて治療を組み立てることです.患者が家族の誰かを介護する立場にある時は,患者だけの治療だけでは医療は完結しません.患者が置かれている立場や環境も治療の中の一つの背景因子なのです.患者と医療者がお互いにパートナーとして治療を計画する,組み立てることが今後の医療には必要です.新棟の完成と開院を契機として, この3年間に全ての職員と共有してきた地域医療への取り組みをさらに進めていきたいと思っております.

病院長 黒﨑 功

ページの先頭へ戻る